前回までの講座まででパスタの基本となる3種のソース、ペペロンチーノ・トマトソース・クリームソースをご紹介しました。

 

今回は少し目線を変え、以前ご紹介したトマトソース・クリームソースについて、シンプルなレシピをご紹介します。

 

※前回の講座はこちら

※詳しいレシピはこちら(シンプルなトマトソース)

※詳しいレシピはこちら(シンプルなクリームソース)

 


レシピの考え方について

以前の講座では、トマト缶を30分ほど煮込んでから一晩寝かせたものを「基本のトマトソース」としてご紹介しました。

 

しかし、料理にルールはありません。講座の第1回でも書いたとおり、パスタはとても自由な料理です。トマトソースを作るのに、必ずしも時間をかける必要はありません。

 

時には、「トマトソースの作り置きがなかった」「あまり時間がないけどトマトソースが食べたい」というような場面もあると思いますが、そんな時はトマト缶をサッと煮ただけのレシピでも、ちゃんと美味しいパスタは作れます。

 

パスタ料理に関して、「時間と手間をかければかけるほど美味しくなる」という考え方は捨ててください。シンプルに調理することで、素材の味を活かし、結果的に良い味になるということは多々あります。

 

これまでの講座で、基本的なパスタソースについてはご紹介しました。基本を抑えた後は、徐々にアレンジを加えていくと料理が面白くなります。時々の気分やシチュエーション、食材などに合わせて、自由にパスタ料理を作ることを目指しましょう。

シンプルなパスタソース

シンプルなトマトソースについて

今回ご紹介する一つ目のレシピは、シンプルなトマトソースです。(このサイトでは、「サン・ジョバンニ風」と呼んでいます。)

 

以前ご紹介した「基本のトマトソース」は、玉ねぎを炒めて甘味と旨味を出し、しっかりと煮込むことでトマトの甘味と程よい酸味を引き出して作りました。

 

このレシピは、比較的クラシックなレシピで、仕上がりもしっかりとした重めの味わいになります。

 

一方「サン・ジョバンニ風」では玉ねぎを使用しません。ニンニクとアンチョビを炒め、トマト缶を加えて強火でサッと沸かせば完成です。玉ねぎが入っていない分、甘みが少なくシャープですっきりとした味わいになります。都会的な味わいとも言えるかもしれません。

 

東京の人気トラットリアなどでも、トマト本来の旨味を最大限活かすため、トマトソースはシンプルに作る、というところも少なくないようです。

 

じっくり煮込むトマトソースと比べて、トマト缶による味の差がはっきり出る作り方ですので、いろいろなトマト缶を試してみるのも楽しいかもしれませんよ。

サン・ジョバンニ風パスタ

シンプルなクリームソースについて

続いて、シンプルなクリームソースのご紹介です。こちらも、「基本のクリームソース」で使用していた玉ねぎを使わないレシピになります。

 

調理は簡単です。フライパンにバターとオリーブオイルを引いて生ハムを軽く炒め、生クリームと牛乳を加えればソースの完成、そこにパスタとパルミジャーノを加えれば美味しいパスタの完成です。

 

先ほどのシンプルなトマトソースにはアンチョビを使用していましたが、こちらは生ハムで味と香りをプラスしています。

 

ここで一つポイントです。地域にもよりますが、イタリア料理において魚介類とチーズは一緒に食べません。ですので、パスタ料理においても、魚介類とチーズは併用しないのが、ベーシックなレシピの組み立てになってきます。

 

今回のレシピでは、パルミジャーノチーズを最後の味付けに使いたいので、魚介類のアンチョビは避けて生ハムを使用しています。ただ、サーモンに関してはチーズとの併用が比較的認められており、実際に味もよくマッチします。

 

今回は具材に生ハムを使いましたが、これを市販のスモークサーモンに変えても美味しいクリームパスタになりますよ。

シンプルなクリームパスタ

胡椒について

ここで改めて、胡椒について触れていきたいと思います。

 

以前ご紹介した「アマトリチャーナ」は、黒胡椒を使ったレシピでしたね。そもそも胡椒というのはアジア原産の植物で、果実部分がスパイスとなります。

 

最もよく使われるスパイスの一つで「スパイスの王様」とも呼ばれ、古くから重要な貿易品として取り扱われていました。

 

唐辛子とはまた違う、スッとした爽やかな辛さが特徴的ですね。カルボナーラをはじめ、パスタ料理にもよく使われる重要なスパイスです。

 

スパイスとしての胡椒にはいくつかの種類があります。主なものとして、黒胡椒・白胡椒・ピンクペッパーがあります。

 

一般的によく使われるのは黒胡椒(ブラックペッパー)ですね。これは胡椒の実を完熟前に収穫し、干したものです。いわゆるスパイシーな存在感のある香りで、料理全体をグッと引き締めてくれます。肉や魚の生臭さを消す効果もあります。

 

白胡椒は、完熟した実を収穫し、水に浸して発酵させた後、外側の皮を剥がしたものです。黒胡椒と比べて辛味やパンチが少なく、スッとしたほんのり甘い香りが特徴的です。クリームソースや魚との相性が良いです。

 

可愛らしい鮮やかな赤い見た目のピンクペッパーは、実は胡椒ではありません。「コショウボク」という別の植物の果実を乾燥させたもので、こちらもピリッとしつつ甘い香りが特徴です。辛味はあまりありません。魚介類、特にサーモンとの相性がよく、カルパッチョなどにもよく使われます。

 

料理に合わせて、胡椒の種類を変えてみるのも楽しいですよ。削りたての方が風味や香りが良いので、余裕があれば、ペッパーミルを手に入れてガリガリと削りながら使ってみてください。

胡椒

いかがだったでしょうか。シンプルな調理法でもしっかりと美味しいものができあがる、そして柔軟にレシピを組み立てていくということをお伝えできたでしょうか。

 

パスタ料理はとても楽しいものです。基本を抑えつつ、自分なりの一皿を自由に作れるよう、願っています。