パスタ料理には色々なソースがありますが、基本的にはオイルソース・クリームソース・トマトソースをベースに組み立てられています。今回はその基本となるソースの一つ、クリームソースのパスタについて作り方の基本を解説していきます。
※最も基本となるオイルソース(ペペロンチーノ)についてはこちらで解説していますので、まだお読みになっていない方は先に読むことをおすすめします。
(参考レシピ)基本的なクリームパスタの作り方
牛乳と生クリームについて
調理の内容に触れる前に、主材料となる生クリームについて説明します。まず、意外と知らない生クリームと牛乳、バターの違いについてです。
牛乳は牛の生乳に殺菌などの処理を加えて作られたもの、一方で生クリームは牛乳から「脂肪分」を取り出したものです。従って、基本的には生クリームの方がより濃厚でコクのある味わいになっています。また、生クリームを瓶などに入れて振り続けると、脂肪分と水分が分離してバターが出来上がります。
クリームパスタを作る際、牛乳と生クリームどちらを使うのか、また両方使う場合はどれくらいの比率で使うのか、人それぞれ意見が分かれますが、「パスタ手帖」に掲載しているレシピは基本的に「牛乳:生クリーム=1:2」となっています。
生クリームだけを使うと濃厚な味わいになりますが、少しくどくて食べ飽きてしまうような味わいになってしまいますので、牛乳を少し加えることでモッタリしすぎないようにしています。逆に牛乳だけを使うと水分が多くシャバシャバになってしまいますので、上記の比率をおすすめしています。
- 生クリーム=牛乳から脂肪分を取り出したもの
- 生クリームだけだと濃厚な味わいに
- おすすめは牛乳:生クリーム=1:2
(参考レシピ)長ネギのクリームパスタ

分離について
牛乳を使用する際に気をつけなければいけないこと、それは「分離」です。
牛乳には多くのタンパク質が含まれています。これは、酸との化学反応や加熱によって変質、凝固するという特徴があります。ですので、例えばレモン汁と混ぜ、高温で加熱し続ける、などの調理をしてしまうと、タンパク質が固まったカッテージチーズのようなものが分離して浮いてきてしまう、ということになります。味わいはそこまで損なわれませんが、見た目が悪くなってしまいますので、上記のような調理は避けましょう。
ただ、必要以上に神経質になる必要はありません。筆者も牛乳を分離させてしまったことは過去1度しかありません。その時は、「白ワインと牛乳を同時に鍋に入れ」「高温で放置、加熱し続ける」という調理をしてしまいました。
ワインにもクエン酸などの酸が含まれています。ワインを使うクリームパスタのレシピも多くありますが、牛乳を加える前にしっかりと強火でアルコールと酸を飛ばしてあげれば、分離が起こることはありません。
また、例えば「レモンクリームパスタ」などを作りたい場合は、レモン汁は火を切った後、調理の最後に加え、「牛乳と酸を同時に加熱しない」ようにしてあげれば大丈夫です。
ちなみに、先に述べたように生クリームというのは牛乳の中の脂肪分を取り出したもので、牛乳と比べてタンパク質は少ないため、牛乳だけ使用するよりも、牛乳と生クリームを併用する方が分離が起きづらいです。
- 牛乳のタンパク質は高温・酸で分離
- 生クリームは分離しづらい
(参考レシピ)豚肉と白菜のクリームパスタ
クリームの煮詰め方
この項目も、人それぞれ流派の異なる項目です。「生クリームはしばらくの間ポコポコ沸騰させる」というレシピもあれば、「温めるだけでほぼ煮詰めない」というものもあります。
煮詰めれば煮詰めるほど濃厚な味になりますが、一方でモッタリとした味わいになるので煮詰めすぎると口当たりは悪くなります。
個人的にはあっさり目で少し水分の余裕があるソースが好きなので、この「パスタ手帖」ではあまり煮詰めず、軽く沸かす程度に加熱しているレシピが多いです。皆さんもお好みの濃度を研究してみてください。
(参考レシピ)モッツァレラと生ハムのクリームパスタ

玉ねぎは使う?使わない?
玉ねぎも、使う派と使わない派が分かれる食材です。
バターなどで透明になるまで炒めると、玉ねぎは甘味と旨味が出ます。これがソースの味わいを濃厚で奥行きのあるものにしてくれる、と考えることもできますが、一方で生クリームや牛乳も甘さを感じる材料ですので、そこに甘い玉ねぎを加えると全体が甘くなりすぎて締まりのない味になってしまう、という考え方もあります。
一緒に使う食材やコンセプトに合わせ、またクリームと同様お好みで使い分けてみるのが良いと思いますが、「パスタ手帖」ではシャープな味わいにするため玉ねぎを使わないレシピが多いです。
(参考レシピ)ゴルゴンゾーラのペンネ

しっかり「出汁」をとる
「ペペロンチーノのポイント」でも説明しましたが、パスタを美味しく仕上げるには動物性のたんぱく質を入れることが肝要です。クリームパスタにはベースとしてクリームやバターなどが入るため、実は比較的楽に美味しくすることができるパスタ料理です。ですが、クリームとバターだけではちょっぴり物足りないので、他の食材で旨味をプラスしてあげましょう。
おすすめは、生ハム、もしくはスモークサーモンです。これらをオリーブオイルやバターで炒めてソースに香りと旨味、塩味を溶かし込んであげることで、クリームソースの風味が何段階もアップします。もちろん、これらの食材が手に入らない場合はベーコンやパンチェッタ、ハムなどを使ってもOKです。
このように、ソースに香りや旨味を溶かし込む工程は、日本料理でいうところの「出汁をとる」ような作業で、ソースのベースを作る大切な工程です。
もう1つ、クリームパスタに重要な食材はパルミジャーノチーズです。ソースに溶かし込んでもいいですし、仕上げにかけるのも見栄えが綺麗で良いです。比較的クセがなく、どんな食材ともよく合うパルミジャーノは、クリームパスタとは切っても切れない関係の食材ですね。
- 動物性たんぱく質を入れるのが大切
- 生ハム、スモークサーモンがおすすめ
- パルミジャーノもたっぷり使いましょう
(参考レシピ)ミモレットと生ハムのクリームパスタ
塩分は気持ち強めに
クリームパスタの場合、全体の塩分は気持ち強めがおすすめです。生クリームや牛乳は甘味を感じさせる材料で、濃厚なコクが美味しい一方、モッタリしすぎると食べ飽きてしまう味になってしまいます。
上記の「出汁をとる」工程でしっかり塩分や旨味を引き出し、食べ進めても飽きのこない味を作りましょう。

パスタは必ずアルデンテで
パスタ料理はどんなソースでも基本的にアルデンテが良いのですが、特にクリームパスタは茹で加減が非常に重要なソースです。
これまでにも何回か書いてきましたが、クリームパスタはモッタリした味になりがちな料理です。パスタがクタクタだと、ただでさえ重めなソースと合わさって、非常に鈍重な味わいになってしまいます。重ためなソースだからこそ、パスタは必ずアルデンテで、歯切れの良い食感を目指しましょう。
クリームパスタの場合、パスタの種類は太いものから細いもの、ロングでもショートでも良く合いますが、個人的には上記の理由で生パスタよりも乾麺をおすすめします。
今回はクリームパスタのポイントについてご説明しました。いくつかのポイントは人それぞれ好みが分かれるポイントですので、ぜひ色々試しながらご自身のベストを見つけてみてくださいね。