今回のお題は「基本のトマトソース」です。前回まででペペロンチーノベースの作り方、さらにそこに具材を入れることを学びました。今回はパスタの中でも人気のある定番ソース、トマトソースの作り方を学んでいきましょう。

 

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ポモドーロ

はじめに

初めに、トマトと料理の歴史について簡単にご説明します。

 

イタリア料理といえばトマト、と思う方もいらっしゃると思いますが、トマトはイタリア料理、特にパスタ料理ではとても重要な食材です。

 

しかし、トマトはヨーロッパではなくアメリカ大陸原産の植物で、実際にイタリアに持ち込まれたのは16世紀の大航海時代ですので、それ以前は料理には使われていませんでした。

 

諸説ありますが、最初は有毒/媚薬になる、などと言われ観葉植物として楽しまれていたトマトが、やがて食用になっていったようです。(ちなみに、唐辛子も同様にアメリカから持ち込まれた食材です。)

 

さて、トマトはイタリア語で「pomodoro」これは直訳すると「金のリンゴ(pomo d’oro)」という意味で、今回ご紹介する基本のトマトソースは「pasta al pomodoro」、略して「ポモドーロ」と呼ばれるパスタソースです。

 

ご存知の通り、トマトをベースにしたパスタソースはたくさんあります。辛みを効かせたアラビアータ、アンチョビとオリーブの入ったプッタネスカ、豚肉を使ったアマトリチャーナなど…

 

今回ご紹介するポモドーロは、それらのベースとなる大事なソースですので、しっかりポイントを押さえていきましょう!

【ゼロから始めるパスタ講座】vol.3<br>基本のトマトソース

トマト缶について

トマトソースを作るには、当然のことながらトマトが必要です。生のトマトをそのまま使う方法もありますが、安定するメジャーな方法は市販のトマト缶を使用する方法です。

 

スーパーなどで売っているトマト缶は400g入りのものが多いです。1〜2人前だと200gでちょうど良いくらいの量ですが、200g入りのトマト缶はなかなか売っていません。

 

また、トマトソースは作るのに少し時間がかかるので、毎回作るのは効率が悪いです。ですので、基本的にはある程度の量をまとめて作って保存しておく、ということをおすすめします。

 

今回はご家庭にある鍋などでも作りやすい、400g×2缶の800gの分量で作っていきましょう。大体これで2人分×3食分程度のソースは出来上がります。

 

トマト缶にも色々と種類があり、トマトの品種などによって味わい(酸味が強い、甘味が強い、など)も違いますが、お近くで手に入るもので結構です。もし商品選びに迷うようであれば、私がいつも使っている下記の商品(MUTTI)をおすすめしておきます。こちらの商品です

 

ちなみに、「原産国:イタリア」と書いてあるからといって、それが「イタリア産のトマトを使っている」わけではありません。

 

国外からの輸入品に関しては「原産国=どこの国から輸入されたか」という意味であり、例えば「中国から持ってきたトマト汁をイタリアで缶詰にした」場合も、原産国はイタリアとなります。

 

必ずしもイタリア産のトマトを使ったトマト缶が素晴らしい、と一概に言えるわけではありませんが、もしイタリア産のトマトを使ったトマト缶を使用したい場合は、パッケージなどにしっかり「イタリア産のトマトを使用」などと表記のあるものを使いましょう。

【ゼロから始めるパスタ講座】vol.3<br>基本のトマトソース

玉ねぎについて

今回新しく登場する食材は、玉ねぎです。玉ねぎもニンニクに次いでよく使用する食材ですので、扱いに慣れていきましょう。玉ねぎのカットの仕方は2パターン、ザクっとスライス・もしくはみじん切りです。

 

玉ねぎの食感と存在感を残したい場合はスライスで使いますが、基本的にはみじん切りで使用します。今回のようなトマトソースを作る際も、しっかり玉ねぎの味がソースに溶け込むよう、細かいみじん切りでOKです。

 

玉ねぎの役割は、加熱して甘味と旨味をソースに与えるということです。玉ねぎを炒めるときは、フライパンに玉ねぎを加えた後、軽く塩をふりましょう。こうすることで、浸透圧によって玉ねぎの中の水分を素早く外に引き出し、旨味を凝縮させることができます。

 

トマトソースを作るとき、多くの場合は玉ねぎを使用しますが、セロリやにんじんを追加するレシピもあります。玉ねぎやセロリ、にんじんなど、炒めて使用することでソースの香りを高めるするような野菜を「香味野菜」と呼ぶので覚えておきましょう。

 

セロリやにんじんをソースに加えるとコクや甘みが増し、野菜の香りが強めに出ます。ボロネーゼ(ミートソース)など味の濃いソースであればよくマッチしますが、今回のようにシンプルなソースの場合は少しくどくなってしまいますので、今回は玉ねぎだけ使用しましょう。

【ゼロから始めるパスタ講座】vol.3<br>基本のトマトソース

使用するハーブについて

これまでに、ハーブはイタリアンパセリとパセリ、タイムを使いました。今回は、2種類のハーブを新しくご紹介します。1つはローリエ、もう1つはバジルです。

 

ローリエは月桂樹とも呼ばれる大きな木の葉っぱで、加熱しても十分に香りを出してくれるため、煮込み料理によく使われます。野菜の旨味をより強く感じさせてくれるハーブです。

 

バジルは有名なハーブですが、トマトソースにとても相性の良い、少し甘くて爽やかな香りのハーブです。イタリアンといえばこの香り、代表的なハーブです。ご家庭のプランターでも栽培可能ですよ。

【ゼロから始めるパスタ講座】vol.3<br>基本のトマトソース

トマトソースの作り方について

調理の説明に入ります。まず前提として、トマトソースは人によって作り方がかなり異なります。

 

ネットに載っているレシピを見ても、市販のレシピブックを見ても、なかなか同じレシピはありません。先に述べたように、セロリやにんじんを入れるかどうか、どんなハーブを使うのか、などなど…

 

一番大きな違いは、ソースの煮込み時間です。軽く温めるだけであれば、非常にスッキリとした味わいで、トマトソースというよりも、トマトの旨味と酸味を軽くプラスする、といったような仕上がりになります。

 

今回は、トマトの甘味と旨味を十分に引き出す作り方をご紹介します。トマトソースは20〜30分ほど煮込み、さらに粗熱をとってから一晩冷蔵庫で寝かせておきます。

 

少し面倒と感じるかもしれませんが、ソースを寝かせることで味がよく馴染んでコクが増し、素晴らしい味わいになります。

 

トマトを煮込む際は、最初の数分、ある程度水分が飛ぶまでは中火〜強火で焼き付けるようにし、その後は弱火で煮込みます。(焦げついてしまいそうになったら、適宜水を加えます。)

 

トマトは最初から弱火で煮込むと酸味が飛ばずに酸っぱい仕上がりになってしまいます。強火で焼き付けるように炒めることで、トマトの酸味成分であるクエン酸を分解し、トゲトゲした酸味を和らげることができます。

【ゼロから始めるパスタ講座】vol.3<br>基本のトマトソース

調理工程

最後に、実際の調理の工程を簡単にご説明します。

 

まずは前回同様、ペペロンチーノベースを作ります。そこに玉ねぎを加えてしんなりするまで炒め、トマト缶やハーブ類、調味料を加えて煮込んで一晩寝かし、茹でたパスタ、パルミジャーノチーズと和えるだけです。

 

全体を通して、「野菜の甘味・旨味をしっかり引き出す」ということを意識しましょう。

 

こちらのレシピでは隠し味に砂糖を少々入れます。トマト自体が甘い場合は入れなくても良いですが、全体の味をまろやかに仕上げるため、ほんの少しの砂糖を加えることをおすすめします。

 

先に述べたように、トマトソースの作り方には様々なバリエーションがあります。あっさり爽やかに仕上げたい場合は煮込み時間を少なくしたり、仕上げに生のトマトを加えても良いし、例えばローズマリーなど他のハーブを使ってみるのも面白いでしょう。

 

まずは今回ご紹介した方法で作ってみて、徐々に自分の好みの味に近づけていけると良いでしょう。


今回は様々なソースの基本となるトマトソースの作り方をご紹介しました。

次回は、今回作ったトマトソースを活用したパスタをご紹介します。

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